対称座標法 — 正相・逆相・零相への分解

V1|V_1| 正相
0 V
V2|V_2| 逆相
0 V
V0|V_0| 零相
0 V
不平衡率 V2/V1|V_2|/|V_1|
0.0 %
V
°
V
°
V
°

パラメータを動かしてみよう

1 対称座標法とは

対称座標法は、任意の三相電圧(平衡でも不平衡でもよい)を、3つの平衡な系の重ね合わせとして表す手法です。

  • 正相 (V1V_1): R → S → T 順に位相が遅れる平衡三相
  • 逆相 (V2V_2): R → T → S 順(回転方向が逆)の平衡三相
  • 零相 (V0V_0): 3相とも同振幅・同位相(差がない)

慣習として R 相を基準とした代表値を V0,V1,V2V_0, V_1, V_2 と書きます。S 相・T 相の各成分は対称性から自動的に決まります。

💡 数式: a=ej120a = e^{j120^\circ} として
V0=(Vr+Vs+Vt)/3V1=(Vr+aVs+a2Vt)/3V2=(Vr+a2Vs+aVt)/3\begin{aligned}V_0 &= (V_r + V_s + V_t)/3 \\ V_1 &= (V_r + a\,V_s + a^2 V_t)/3 \\ V_2 &= (V_r + a^2 V_s + a\,V_t)/3\end{aligned}

💡 線間電圧では零相は常にゼロ: Vrs+Vst+Vtr=0V_{rs} + V_{st} + V_{tr} = 0(KVL の恒等式)。零相は和 ÷ 3 なので、線間電圧に対しては必ず 0 になります。よって零相成分が観測できるのは相電圧(中性点との電位差)に対称座標法を適用したときに限られます。零相電流はその性質上、中性線・大地を通じて流れる成分です。

2 平衡状態 → 正相のみ

まずデフォルト(R=200V∠0°, S=200V∠−120°, T=200V∠+120°、平衡三相)で観察してください。

  • 右のフェーザー図: V1 だけが存在(他の2本は原点に重なって長さゼロ)
  • 下の R 相分解グラフ: vr(t) と v1(t) が完全に重なる(同じ波形)、v2 と v0 は平坦線(=0)
  • 数値表示: |V1| ≈ 200V、|V2| = |V0| = 0

💡 これが対称座標法の最重要ポイント: 平衡三相 = 正相成分のみ。逆相も零相もゼロ。実務では「正相」を基本量として扱うのはこの理由です。

3 振幅不平衡 → 逆相と零相が現れる

R 相の振幅を 100V に下げてみてください(他はそのまま)。途端に V2(逆相) と V0(零相) のフェーザーが原点から伸びはじめます。

下の分解グラフでも v2(t) と v0(t) の正弦波が現れます。各時刻での v1 + v2 + v0 の縦方向の和が、太赤線の vr にぴったり一致していることを確認してください。これが「分解が成立している」ことの直接の証拠です。

位相不平衡(例: S 相を −90° に変える)でも同様に、逆相・零相は現れます。「不平衡 = V2 または V0 が非ゼロ」と覚えておけば直感がつきます。

4 1相欠相 → 大きな逆相・零相 (地絡事故のモデル)

T 相の振幅を 0V に下げてみてください。これは 1相欠相(地絡事故)を簡易的にモデル化した状態です。

逆相・零相成分が大きく現れ、不平衡率(|V2|/|V1|)が顕著に上昇します。実際の電力系統では、地絡継電器(零相電流検出)や不平衡保護装置がこの V0・V2 の出現を検知して事故を判定します。

💡 補足: 同じ条件を 線間電圧の図 で見ると、線間電圧の 零相成分は常にゼロ のままです(KVL より Vrs + Vst + Vtr = 0)。零相が観測できるのは「相電圧 (中性点との電位差)」だからこそ。零相電流は中性線・大地を通して流れる成分でもあります。